増える訪日客、広がる宿泊税
2018/10/15 日常
ご存知でしたか?
東京都、大阪府、京都市ですでに導入済。福岡、金沢市、北海道でも検討中
宿泊税は東京都が2002年、外国人向けの案内の充実や、国際会議誘致に充てるため、全国に先駆けて課税を始めました。 2013年に訪日客が1千万人を超えて以降、日本の観光人気が加速して、24018年は3千万人を突破する勢いで、多言語の案内標識設置、トイレの洋式化、災害対策といった環境整備が急務になってきました。
宿泊税は地方税
宿泊税とは、宿泊施設を利用した場合に課される税金のことをいいます。
宿泊税は法定外目的税で、地方自治体の条例により制定される地方税です。
よって、導入している地方自治体ごとに税額や対象施設が異なることになります。
既にアメリカやカナダでは多くの地域で導入されており、日本では東京都(2002年)、大阪府(2017年)、京都市(2018年)が導入済みです。
納税者は宿泊施設、負担者は宿泊者
宿泊税を納税する義務があるのは、課税対象施設となっている宿泊施設ですが、その金額を負担するのは宿泊者です(特別徴収)。
課税対象となる宿泊施設
宿泊税を導入している地域で宿泊した場合でも、その宿泊施設が課税対象外であれば宿泊税を請求されることはありません。 各地方自治体で定められている課税対象施設は次の通りです。
【東京都】
旅館業法に規定された都知事の許可を受けて、ホテル営業または旅館営業を行う施設が対象となります。簡易宿泊施設や国家戦略特区で都知事の許可を得ない民泊は対象外となっており、基本的には民宿やペンションなどは課税対象施設になりません。
【大阪府】
ホテル、旅館、簡易宿泊施設、国家戦略特区で府知事の許可を得ない民泊などほとんどの宿泊施設が対象となります。
【京都市】 いわゆる違法民泊を含むすべての宿泊施設が対象となります。
税額は?
【東京都】 宿泊料金が 1万円未満 非課税 1万円以上1万5千円未満 100円
1万5千円以上 200円 二人以上が一室に宿泊する場合は、一人当たりに換算して宿泊料金が算出ます。修学旅行や業務による宿泊者を減らさないように、1万円未満の宿泊を非課税としています。
【大阪府】 宿泊料金が 1万円未満 非課税 1万5千円未満 100円 1万5千円以上2万円未満 200円 2万円以上 300円
【京都市】 宿泊料金が 2万円未満 200円 2万円以上5万円未満 500円 5万円以上 1000円
→ 京都市は日本屈指の観光都市なのですが、厳しい景観規制のため高層建築物が少なく、非課税の神社仏閣が多いなどの理由で固定資産税を多くとれず、担税力が低い学生が比較的多い事情から、実は厳しい財政状態にある一方で、観光名所の国際化、観光客の増加に伴う公共交通機関の慢性的遅延の解消が課題となっています。そこで新たな財源を確保するため宿泊税導入となったのです。
導入の目的、使い道は?
【目的】
国際都市としての発展
都市の魅力を高める
観光の振興
【使い道】
・より魅力的な観光地にするための観光資源の開発・充実
・旅行客誘致のための広告宣伝
・観光案内や情報提供の充実等
今後の課題
県と市の二重課税の問題
地方自治体とは県市区町村の事をいいますので、県と市が宿泊税を導入することになったら、宿泊者は県と市の両者に対して納税を求められることになります。
観光客の減少や地域格差の問題
観光都市としてのブランド力がある地域であれば、宿泊税をはらってでも宿泊したいと思う人が多いでしょうが、それほどブランド力がない地方都市では、宿泊税の導入は観光客の減少につながる恐れがあります。
使途が不明確
宿泊税は、観光をよりよくするために使われるとされており、その税額を観光客が負担するということには合理性を感じますが、観光環境をよくするために道路を整備したとすると、この道路は観光客のみならず、その地域の住民も通るでしょう。このように宿泊税は徴収されたすべての税額が観光客のために使われるわけではないのです。
宿泊税は今後さらに全国的に広がっていくと思われますが、導入する地方自治体には、不公平感のない、その地域全体が納得できる制度作りが求められると思います。
監査部 西島 健志