親族間の不動産使用貸借について
2019/03/04 日常
個人で事業を始める場合、家族や親族から店舗や事務所、倉庫、駐車場など事業に利用する建物や土地を借りることがよくあります。
不動産会社を通して借りる場合は、明確な契約のもとで、賃料などもきちんと決まっていますが、家族や親族から借りる場合は、
どうしたらよいかよくわからないことも多いと思います。
今回は、このように家族や親族から事業で使う土地や建物を借りる場合のポイントを解説します。
個人事業主は、家族が所有している建物や土地を借りる場合がありますが、父親名義や配偶者名義の不動産を借りる場合には注意すべき点があります。
税務署は、家族間の取引は、恣意的な調整が可能であるため、税金の支払いを意図的に回避していないかどうかという観点で、経理処理や契約をチェックしてきます。
何も考えずに、家族や親族が持っている土地や建物を使用していると、税金を取られるケースがあるのです。
したがって、家族や親族から建物や土地を借りる場合も、契約関係や賃料の支払いの要否を整理しておかないと、思ってもいない税金がかかってしまうこともありますので、
以下で解説するポイントを押さえておきましょう。なお、前提として借主・貸主ともに個人であることを想定しています。
ポイント① 借主と貸主が生計一かどうか?
会計処理を決定する上で、借主と貸主がどのような関係かを最初に確認しておく必要があります。
具体的には、貸主と借主が「生計一」かどうかを確認します。
例えば、次のように整理するといいでしょう。
・同一の家屋で生活・・・生計一
・同一の家屋で生活しているが、明らかに別々の家計でやりくりしている・・・生計別
・単身赴任で休みの日に帰省したり、生活費の送金をしている・・・生計一
・大学生で下宿しており、休みの日に帰省したり、生活費や学費の送金をしている・・・生計一
・介護が必要な親に対し、生活費や介護費用の送金をしている・・・生計一
イメージとして、「生活のための財布が同じであれば生計一」と考えていいと思われます。
ポイント② 借主の会計処理
次ののポイントは、家族や親族から事業で使う建物や土地を借りている側の会計処理です。
こちらは、生計一かどうかで会計処理が変わってきますので、それぞれ解説します。
◆生計一の家族に家賃を支払う場合
生計一の家族に家賃を支払う場合には、注意が必要です。
税法の用語でいう「生計を一にする配偶者その他の親族」に支払う家賃は必要経費になりません。
これは、生計一の親族間で家賃の授受を行っても、同じ財布の中でお金を移動しているだけと考えられるためです。
よくあるケースとして、配偶者や親が所有している不動産を借りて家賃を支払うケースが挙げられます。
ただし、この場合、配偶者や親が所有している不動産に係る経費は事業主の必要経費に入れることができます。
例えば、固定資産税、火災保険料、保険料、減価償却費が挙げられます。
◆生計別の家族に家賃を支払う場合
生計別の家族に家賃を支払う場合には、上記のような制限はありません。
建物や土地を借りる側が負担した家賃をそのまま必要経費として会計処理します。
生計別の家族に家賃を支払う場合には、賃貸借契約書を作成しておくことが重要です。
税務署は親族間のやりとりがある場合、恣意的な条件で行っていないか、疑ってくる可能性があります。
また、税務調査で家族への家賃支払いについて指摘された場合、最初に賃貸借契約書の提出を求められます。
一般的なひな型でいいので、賃貸借契約書をしっかり準備しておきましょう。
監査部一課:十塚彰文