民法改正による相続税への影響
2019/05/27 税務
皆様こんにちは。
近年の民法改正により相続の分野でも様々な改正が行われています。
そこで今回は民法改正による相続税への影響についていくつかご紹介したいと思います。
(1)仮払い制度の創設 (※2019年7月1日(月)施行)
【POINT】
預貯金が遺産分割の対象となる場合に、各相続人は、遺産分割が終わる前でも、一定の範囲で預貯金の払戻しを受けることができるようになります。
・改正によるメリット
今回の改正により、遺産分割における公平性を図りつつ,相続人の資金需要に対応できるよう、以下の2つの預貯金の払戻し制度を設けることになりました。
(ⅰ)預貯金の一定割合(※上限あり)については、家庭裁判所の判断を経なくても金融機関の窓口における支払を受けられるようにする。
(ⅱ)預貯金に限り、家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件を緩和する。
仮払いの必要性があると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようにする。
(2)自筆証書遺言の方式緩和 (※2019年1月13日(日)施行)
【POINT】
自筆証書遺言について、財産目録については手書きで作成する必要がなくなります。
ただし、 財産目録の各頁に署名押印をする必要があります。
・改正によるメリット
今回の改正により、自書によらない財産目録を添付することができるようになりました。これにより、高齢者でも遺言を残しやすくなるなどの効果が期待されます。さらに、財産目録には署名押印をしなければならないので,偽造も防止できます。
パソコンで目録を作成⇒○ 通帳のコピーを添付⇒○ 登記事項証明書等のコピー⇒○
(3)法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(※2020年7月10日(金)施行)
【POINT】
自筆証書遺言を作成した方は、法務大臣の指定する法務局に遺言書の保管を申請することができるようになりました。ただし、作成した本人が遺言書保管所に来て手続を行う必要があります。
・改正によるメリット
改正により、遺言者の死亡後に、相続人や受遺者(遺言によって財産をもらう人)らは、全国にある遺言書保管所において、遺言書が保管されているかどうかを調べることや、遺言書の写しの交付を請求することができ、また、遺言書を保管している遺言書保管所において遺言書を閲覧することもできます。
これにより、相続人等は相続が発生した時点で、遺言の有無を確認できるようになります。そして、遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付がされると,遺言書保管官は,他の相続人等に対し、遺言書を保管している旨を通知します。そのため、ある相続人だけが遺言の中身を確認して、自分に不利な内容であれば破棄するというような行動を取ることもできなくなります。さらに遺言書保管所に保管されている遺言書については,家庭裁判所の検認が不要となります。
しかし、せっかく保管制度を利用しても相続人が保管所に問い合わせなければ意味がありません。この制度を利用される方は相続人等にその旨を伝えておくことも重要です。
(4)特別の寄与の制度の創設(※2019年7月1日(月)施行)
【POINT】
相続人以外の被相続人の親族が無償で療養看護等を行った場合には、相続人に対して金銭の請求をすることができるようになります。
・改正によるメリット
改正により、相続開始後には、無償で療養看護等を行った被相続人の親族等は、相続人に対して、金銭の請求をすることができるようになりました。これにより、被相続人の親族等の介護等の貢献に報いることができ、実質的公平が図られるようになりました。
ただし、遺産分割の手続が過度に複雑にならないように,遺産分割は、現行法と同様、相続人(長女・次男)だけで行うこととしつつ、相続人に対する金銭請求を認めることとしたものであるという点に注意が必要です。
以上のように、今回の改正により、今までとは異なった対応ができるようになりました。
相続についてお悩みがある方は是非福田事務所までご相談下さい!
監査部 平山大輔