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開業医を考えられている方へ 福利厚生について

2019/10/21 日常

こんにちわ、福田税務労務合同事務所の塩塚です。

今回は開業医を目指されている先生方に向けて、福利厚生について書かせていただきます。

 

「福利厚生」について

先生方は「福利厚生」という言葉を聞いてどんなイメージをお持ちでしょうか。

多くの先生方は、現在勤務医としてどこかの歯科医院で現在勤務している、もしくは過去にしていた経験があると思います。ご自身が勤務先を探される時に、その診療所には、どのような「福利厚生」があるのか調べられたもしくは、面接時に聞いた経験があると思います。「福利厚生」には社会保険のような法定内のものと、勤め先がご自身の健康診断料を負担してくれる、あるいは研修を受けさせてくれるといった法定外のものがあります。ここでいう法定内のものとは、法律で定められているということです。すなわちスタッフ・従業員を雇用する事業主であれば原則として彼らに対して提供する義務があります。まずは先生方が開業後、この法定内の「福利厚生」についてどのように考えていけばいいかということについてご説明させていただきます。

 

法定内の「福利厚生」について

診療所をこれから開業しようという先生方は、これからスタッフ・従業員を雇う必要があると思いますが、診療所の雇用人数によっては健康保険や厚生年金に強制的に加入しなくてはならないかもしれません。法定内の「福利厚生」としては以下の図のようなものがありますが、何人以上のスタッフ・従業員を雇う場合に加入義務があるかを含めてお伝えしていきます。

                       

健康保険料は従業員の年齢や給与、地域によって異なりますが、加入にかかる費用は医院とスタッフ・従業員で半分ずつ支払うことが義務付けられています。正社員が5人以上の医院は社会保険の加入が義務付けられています(※正社員5人以上の要件につきましては、厳密にはパートやアルバイトであっても強制的に加入しなければならない場合があります。その場合につきましては後述致します)。

介護保険は40歳以上のスタッフ・従業員にのみ加入が義務付けられています。従って40歳未満(40際は含まない)には加入する義務はありませんので保険料の支払いもありません。こちらも健康保険料と同様に会社が保険料の半分を負担し支払いが義務付けられています。正社員が5人以上の個人事業主は加入義務があります。

厚生年金保険は、健康保険料と同じく加入にかかる費用は会社と従業員で折半することになります。正社員5人以上の個人事業主は加入義務があります。

労災保険に関しては、従業員を1人以上雇っている場合は加入が必須となります。

雇用保険に関しては、正社員だけでなく週の所定労働時間が20時間以上のパートさんも加入対象となります。

※パートやアルバイトであっても健康保険や厚生年金に加入させなければならない条件として1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ医院で同じ業務を行っている正社員など一般スタッフの4分の3以上の労働時間があるのであれば加入させる必要が出てきます。従って正社員5人のうちにこのようなパートさんも含まれることとなることにご注意ください。

※医師国保・歯科医師国保(「医師・歯科医師健康保険組合」や「東京都医師・歯科医師健康保険組合」)にご加入の医院の場合、申請により健康保険が適用除外され歯科医師国保や東京都健康保険組合に加入したまま厚生年金の蚤の加入が可能です。

やはり、社会保険(健康保険+厚生年金)への加入は先生方がスタッフを採用していくにあたって優秀な人材への歯科医院の大きなアピールポイントとなるでしょう。社会保険に加入していない医院のスタッフは、個人的に国民健康保険や歯科医師国保に加入し、自分で保険料を支払う必要がありますので、社会保険に加入していることは求職者にとって非常に大きなメリットとなりますし、クリニックにとっても他院と差別化するポイントになります。

厚生年金と健康保険の半額を歯科医院が負担しなければいけませんが、求職者にとっては、老後の年金や出産手当金受給をもらいたいというニーズに応えられますので、優秀な人材が集まってくるようになるでしょう。

社会保険の加入の手続き等でお困りの先生方は是非お近くの社労士にご相談ください。

 

 

 

 

法定外の「福利厚生」について

次に法定外「福利厚生」についてご説明させていただきます。

法定外の「福利厚生」については、どうするか裁量権のあるのは経営者である先生ご自身です。取り入れるのも取り入れないのも自由ですが中には人材確保のための歯科医院のアピールにつながるものもあると思われます。一般的な「福利厚生」としては以下のようなものがあります。もちろん以下のものは経費になるのですが、経費にする上での税務上の注意点と一緒に紹介させていただきます。

 

通勤手当関連

スタッフ・従業員の通勤にかかる交通費の費用の全額または一部を負担します。

電車通勤の方の定期代や、車通勤の方のためにガソリン代や駐車場などの費用を負担してあげます。税務上、交通費は課税給与(いわゆる所得税のかかる給料ではない)ではありません。しかしながら、従業員・スタッフの自宅からクリニックまでの距離などによって課税給与とされない限度額は決まっておりますのでご注意ください。

 

健康・医療関連

スタッフ・従業員の毎年ある健康診断にかかる費用などを負担してあげるのも福利厚生の一種です。他にも近年多いストレスチェックなどにかかる医療費などを負担するといった例もあります。

 

レクリエーション関連

レクリエーション関連の福利厚生といえば社員旅行や忘年会、新年会、歓送迎会が該当します。税務上の注意点としては社員旅行、忘年会等のいずれにしても全員が参加できる状態にあることが条件になります。すなわち、スタッフ・従業員全員の参加・不参加の意思を確認して開催の告知を事前にしておく必要があります。忘年会などに関しては常識的な範囲を超えない金額(一人当たり数万円となるようなものではない)である必要があります。

 もし、税務調査に入られた場合、常識的な範囲を超えていると判断された場合は超えてしまっている金額が従業員への給料とみなされてしまいます。そうなると従業員の給料の金額が増加してしまうため増えた分の源泉所得税を納めることになりかねません。

忘年会といえば、景品を渡す場合があるかもしれませんね。また送迎会でも感謝の気持ちを込めたプレゼントを渡すかもしれません。景品は渡す場合はあまり高額なものあげてはいけません。高級ブランド品等の支給は給料の現物支給とみなされてその分の源泉所得税を納めなければならないかもしれません。くれぐれも従業員への贈り物は常識的な範囲の金額にしましょう。

 

慶弔・災害関連

スタッフ・従業員の結婚や出産などに対して慶弔見舞金として給付をしたり、従業員はもちろん身内の不幸などに対しても慶弔見舞金などを支給するのが慶弔・災害関連の福利厚生です。出産祝金や子供の入学祝金、さらには病気や怪我により入院した場合に傷病見舞金が支給する医院もあります。税務上の注意点としては、上述した慶弔費や見舞金は領収書がありません。したがって支払いをした場合はしっかりと出金伝票に記録しておいてくださいね。出金伝票は100円均一ショップに売っているようなもので構いません。

 

 

業務研修関連

業務に関した種類の福利厚生ももちろんあります。衛生士のスタッフに外部研修や講演に参加費を負担してスキルアップのバックアップをしてあげたり、書籍を購入してあげるというのが挙げられます。

 節税対策として、令和1年の確定申告でいうと前年比でスタッフ・従業員への給料と研修費が多くなっているような個人事業主には税金が優遇されるような制度もあります。詳しくお知りになりたい先生は是非税理士にご相談ください。

 

 

監査部二課 塩塚