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確定申告の医療費控除

2017/02/13

思った以上にかかることの多い医療費。しかし一定の額を超えれば、確定申告の際に還付金を受け取ることができるのです。医療費控除全体を理解しながら、具体的な内容を確認していきましょう。また実際にどれくらいの還付金を受け取ることができるのか計算してみましょう。医療費控除の書き方についても説明します。

医療費控除とは

医療費を支払った場合に受けることができる、一定金額の所得控除を医療費控除といいます。

給与所得のある人は年末調整をしますが、医療費の支払いまでは会社に届けないので、会社に手続きをお願いすることはできません。つまり、控除を受けるためには自身で確定申告を行う必要があります。個人事業主もその点は同じです。

また、「一定の金額」とあるように、支払った医療費が全額控除されるわけではありません。その要件や算出方法、対象となる医療費を見ていきましょう。

医療費の合計が10万円を超えると控除が受けられます

確定申告で医療費控除を受ける一番簡単な目安が、1年間の医療費の合計が10万円を超えているかどうかです。

その年の1月1日から12月31までの1年間、税金を納める本人が、自分自身または配偶者やそのほかの親族のなかで「生計を一にする人」のために支払った医療費について、以下の計算式より算出される額を医療費控除として所得金額から差し引くことができます。

医療費控除の対象 = 〔実際に支払った医療費の合計額〕から〔保険金などで補てんされる金額〕を引き、さらに〔10万円〕または〔その年の総所得金額が200万円未満の人は総所得金額5%の金額〕のどちらかを引いたもの

「保険金などで補てんされる金額」とは、入院したときにもらうことができる入院給付金(生命保険などの加入者に対して支給されるもの)、月の医療費が高額担った場合に一部を払い戻してもらえる高額療養費・子どもなど被扶養者の医療費に適用される家族療養費・子どもが生まれたときにもらえる出産育児一時金(健康保険などで支給されるもの)など、払い戻されたまたは支給された金額を指します。

補てんされる金額がその給付の目的となった医療費より高い場合は、ほかの医療費から差し引くことはできません。

医療費控除を受ける条件

医療費を支払っている人を確認しましょう

医療費控除を受けて還付金を受け取りたい人は、還付申告を行なうことで、還付金を受け取ることができます。

また、生計を共にしていれば、自分以外の医療費だけでなく、配偶者や子、孫、祖父母の医療費も併せることができます。さらに、別居していたとしても合算の対象となります。

「生計を共にする」とは、必ずしも同居している必要はありません。別居の場合、休日一緒に行動したり、生活費や学費、療養のための費用を送金したりしている場合などを含みます。逆に、同居している親族でも、別に収入があって生計を独自に立てていれば、「生計を一にする」には該当しません。

医療費の種類を確認しましょう

・申告する年の1月1日から12月31日までの1年間の医療費であること
・医療費控除の対象となる医療費を支払っていること

昨年度の治療費を本年度に支払ったものは、本年度の還付申告の医療費となります。逆に、本年度に治療は受けたけれど、支払いはまだ済んでおらず翌年度になりそうだという場合には、本年度の還付申告の医療費に含めることができないので、注意が必要です。医療費控除の対象となる範囲については、以下の9項目が挙げられます。

1.医師や歯科医師に支払った診療費、治療費
2.治療や療養のために必要な医薬品の購入費
3.病院や診療所、介護老人保健施設などに支払った入院費、入所費など
4.はり・きゅう師や指圧師、柔道整復師へ支払った施術費。ただし、疲労改善や体調を整える目的での施術は含まれません
5.保健史や看護師などに加え、療養上の世話をしてもらうために、特に依頼した人に対する対価。ただし、付き添いのために家族や親類縁者に支払った金銭は対象になりません
6.助産師による分娩の介助費用
7.介護福祉士などによる、たんの吸引や経管栄養の費用
8.診療や治療、施術の介助を受けるために直接必要なもの。例えば、通院費用、入院中の部屋代やベッド代(差額ベッド代は除く)、食事代、診療を受けるために使用した公共交通機関の運賃、松葉杖、補聴器、義足など各種医療用器具の購入費用
9.介護保険制度のもとで提供された施設・居宅サービスの自己負担額

医療費控除の対象となる医療費には、実際にかかった治療費以外にも、薬代やタクシー代、入院中の食事代などが対象となります。また、6か月以上寝たきりで、かつ治療を受けている人で、「おむつ使用証明書」があれば、この支払いも控除の対象になります。不妊治療やAGA治療、ED治療薬も、医療費控除の対象となるので、ぜひ領収書を集めてみてください。

間違いやすい医療費に含まれない項目

医療費控除の対象となるかどうかの判断基準は「治療」か「予防」かになります。

人間ドックを受けて異常所見が見つかった場合には治療となるため、人間ドックにかかった費用を医療費に含めることができます。異常所見が見つからなかった場合は予防となるため、医療費控除の対象外となります。

出産は治療や病気、怪我ではありませんが、医療費として算入することができます。妊婦健診費用や通院費用は医療費とすることができますが、里帰り出産にかかった交通費や入院に際して自分で用意したものにかかった費用は、医療費とすることができません。

医療費控除のケース別注意点

出産費用の場合

妊娠が判明してから受診する定期検診や検査に支払った費用も含まれます。出産の際に利用したタクシーの運賃や入院中の食事代も対象になりますが、実家で出産するための帰省にかかる費用や、病室への出前・外食は含まれません。

入院費用の場合

入院費用に含まれる食事代は対象となりますが、出前・外食が含まれないのは出産費用と同じです。さらに、入院時に準備する身の回り品の購入費も、控除の対象になりません。

歯の治療の場合

一般的に歯の治療材料として使用される金やポーセレンなどは、高価であっても対象となります。しかし、保険外の自由診療など、特殊な治療にかかった場合の費用は含まれません。
歯列矯正は、発育段階の子供の成長を阻害しないために行うなど、必要と認められる場合には対象になります。ただし、歯列の美化を目的とした場合には含まれません。

交通費の扱い

通院にかかった交通費は、付き添い人のものも含めて控除対象になります。ただし、公共交通機関の利用のみであり、自家用車のガソリン代や駐車場代などは含まれません。

領収書とメモは重要な証明書

支払いごとに領収書を受け取ることはもちろん、領収書の発行が難しい公共交通期間による通院費の場合には、日付・金額・目的・人数を書いてメモに残しておくと、それが領収書の代わりになります。

ほかにもある控除対象

高齢者への特定保健指導の自己負担分においても、一定の基準に該当していれば医療費控除の対象になります。このように、医療費控除の対象は多岐に渡っていますので、医療や介護に関連する支払いをしたときや確定申告をする前には、国税庁のサイトでぜひチェックしてください。

医療費の控除を受けるために必要なもの

必要な書類

・確定申告書

確定申告書の受け取るための3種類の方法があります。

・税務署に直接取りに行く
・返信用の封筒を同封して、税務署から取り寄せる
・e-Taxシステムから画面の指示に従ってプリントアウトする
(※通常のA4サイズコピー用紙、白黒印刷でも大丈夫です。)

・領収書

病院から発行される診療費に関する領収書は、必ず原本が必要になります。手元に残しておきたい場合、以下のような方法があります。

・直接申告する場合は、その場で確認してもらって、原本を返却してもらう
・郵送する場合は、返却してほしい旨を書面で伝える
・e-Taxで申告する場合、添付は不要(5年間原本を保管)

・源泉徴収票

あなたが給与所得者であれば、会社からもらった源泉徴収票の提出が必要となります。原本は返却してもらえませんので、コピーを手元に用意しておくと安心です。

申告の時期と申告先

確定申告をする必要のない人が、納めすぎた税金を取り戻すために確定申告することを、還付申告といいます。還付申告は翌年の1月1日から5年の間に行なうことができます。

平成28年1月1日~同年12月31日にかかった医療費に関する還付申告期間は、平成29年1月1日~平成33年12月31日まで可能となります。

控除額の計算

控除額を計算する場合は所得金額が200万円がボーダーラインとなり、計算式が異なります。

・所得金額が200万円未満の場合

所得金額の5%を医療費控除として認めることができます。たとえば所得金額が150万円だった場合、7.5万円を超える医療費分を還付申告することができます。

・所得金額が200万円以上の場合

10万円を医療費控除として認めることができます。たとえば所得金額が200万円だった場合、10万円を超える医療費分を還付申告することができます。

それでは下記の簡易的な源泉徴収票を見ながら、医療費控除を計算してみましょう。

平成2○年度 給与所得の源泉徴収票

 氏名

種別支払金額給与所得控除後の金額所得控除の額の合計額源泉徴収税額

給与3,000,000円1,920,000円830,000円54,500円

 

この場合の所得金額は、1,920,000-830,000=1,090,000円となります。所得金額200万円未満ですので、5%ルールが適用されます。

1,090,000円×5%=54,500円となり、54,500円以上の医療費が控除対象となります。実際に10万円の医療費がかかったとすると、100,000円-54,500円=45,500円が還付金となります。

医療費控除必要書類の書き方

それでは、各種必要書類の書き方について説明していきます。

図-1(医療費の明細書1)

1.図-1の各欄としてある、医療を受けた人、続柄、病院・薬局の所在地や名称、治療内容や医薬品名、支払った医療費、治療の際に保険会社や社会保険から補塡された金額を記入します。
2.図-1にて、支払った医療費、治療の際に保険会社や社会保険から補塡された金額の合計額をA欄、B欄に記入します。
3.図-1で記入したA欄、B欄の金額を図-2のA欄、B欄に転記します。

※医療費明細書の補足
医療費の明細書を記載する際に、通院や入院回数が多くない場合は各欄に記載します。定期的に通院などをし、各欄に書ききれなくなった場合は、医療を受けた人別または、病院・薬局別に領収書を管理し、その合計金額をまとめて転記することも可能です。

図-2(医療費の明細書2)

4.図-2において、A欄に記載した「支払った医療費」からB欄の「保険金などで補塡される金額」を引いた「差引金額」をC欄に記入します。
5.確定申告書の「所得金額」の欄にあり、控除した後の額である「合計」をD欄へ記入します。
6.D欄で記入した所得金額の合計の「5%」の額をE欄に記入します。
7.E欄に記入した額と10万円を比べ、いずれか少ない金額のほうをF欄に記入します。
8.C欄で記入した「差引金額」からF欄で記入した金額を差し引いた額を「医療費控除」であるG欄に記入します。

図-3(確定申告書Bより)

9.図-2のG欄「医療費控除」で記入した額を、確定申告書AおよびBの「所得から差し引かれる金額(参考:図-3 確定申告書Bより)」項目内の「医療費控除」の欄に転記します。

。源泉徴収票と医療費控除に必要な領収書や明細書があれば、誰でも簡単に還付金を受け取ることができます。控除が受けられる条件と1年間に使った医療費を計算して、医療費控除が受けられるかどうか是非確認してみてください。

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