タワーマンションの固定資産税、高層階ほど高くなるってホント?
2017/07/10 税務
こんにちは、先週は九州に大雨が降り、九州北部、特に福岡県朝倉地方、大分県日田市などに、甚大な被害をもたらしました。まだまだ雨は降り続け、危険な状態が続いています。被災地の方々に、お見舞い申し上げます。
平成29年度税制改正で、新築タワーマンションにかかる固定資産税、不動産取得税が見なおされることとなりました。
今まではタワーマンションの階数に関わらず固定資産税は一定額でしたが、改正後は「高層階になるほど増税し、低層階になるほど減税、中階層では据置」となります。タワーマンションってなに? 正式名⇒居住用超高層建築物 高さが60メートルを超える建築物(建築基準法令上の超高層建築物)の内、複数の階に住戸が所在しているものをいいます
背景① そもそも毎年変わる税制は、時代や国際情勢、その時々の政策を反映して変更されます。
最近の税制の方向性⇒ 「所得税は引き上げ」「法人税は引き下げ」が基本路線。さらに「富裕層に対する課税強化」
2015年からの相続税の基礎控除枠も縮小や税率の引き上げもその表れ
背景② 公平な税負担の調整
改正前、マンションでは所有する住戸の床面積に応じて固定資産税等が課税されていました。その住戸が何階にあるのかは関係がなく、一棟の建物にかかる固定資産税を床面積に応じて公平に分担しています。しかし市場価格は違います。実際に取引されるマンションの価格は上層階ほど高くなるのが一般的。特に眺望が売り物のタワーマンションでは、高層階の価値は非常に高くなっており、低層階に比べ価格が1.5倍以上という場合もあるということです。タワーマンションの市場価格が高層階ほど高くなる一方で、床面積が同じであれば1階も20階も50階も全て同じ固定資産税評価であり、同じ税額になる。市場価値が異なるにもかかわらず、固定資産税の金額が同じとなっており、公平な税負担とは言えない状態でした。そこで、国は公平を期すため、マンション一棟の固定資産税の総額は変えずに、階層ごとに金額を調整することにしました。
改正の内容
(A) 固定資産税
タワーマンション全体に係る固定資産税額を各区分所有者に按分する際に用いるその区分所有者の専有床面積を、階層別床面積補正率により補正することになります。
(B) 不動産取得税
タワーマンションの居住用の専有部分の取得があった場合において、そのタワーマンションの評価額をその専有床面積割合によって按分して得た額に相当する価格の家屋の取得があったものとみなして課する不動産取得税については、その専有床面積を、階層別床面積補正率により補正することになります。 階層別専有床面積補正率⇒階層別専有床面積補正率は、住戸の所在する階層の差違による床面積あたりの取引単価の変化の傾向を反映するための補正率をいい、最近の取引価格の傾向を踏まえ、タワーマンションの1階を100とし、階が一増すごとに、これに、10を39で除した数(0.2564・・・)を加えた数値とされる。この補正率により補正した場合、1階と40階で税額に1割の差がでる計算になります。
適用時期
(A) 固定資産税 平成29年1月2日以後に新築されたタワーマンション(平成29年4月1日前に売買契約が締結された住戸を含むものを除かれます)に対して課する平成30年度以後の年度分の固定資産税について適用。
(B) 不動産取得税 平成29年4月1日以後に新築されたタワーマンション(同日前に売買契約が締結された住戸を含むものを除かれます)に対して課する平成30年4月1日以後の取得に対して課すべき不動産取得税について適用。
ここで大事な事 平成29年4月1日以後に新築されたタワーマンションについての改正です
⇒ 中古物件は関係なし、(ただし段階的に改正があるかも)
そこで相続税に影響するのか?
⇒影響はするがそれほどでも・・・・相続税では、財産をいろいろな方法で評価し、税金を計算します。マンションの建物の計算の基礎は固定資産税評価額です。つまり、固定資産税評価額があがれば、相続税での評価も上がり、税額が増加します。一方、タワーマンションは高層階ほど取引価格が高くなるのが一般的です。それなのに固定資産税評価額は、面積が同じならば、高層階も低層階も同じです。ですから、高層階ほど時価と評価額の差が大きく、ある意味お得だったわけです。(中古物件は今のところ改正なし)タワーマンションでは、高層階の価値は非常に高くなっており、低層階に比べ価格が1.5倍以上という場合もある⇒補正率が1階と50階では約13%(10/39×50階) まだまだ有利では・・・
監査部1課 西島 健志