不動産の承継
2018/02/19 税務
今年もやってきました確定申告、3月15日の申告期限まで戦闘モードでやってきたいとおもいます。忙しすぎてなんだか楽しく感じる変な時期です。
弊所では担当者が顧問先を毎月訪問して打ち合わせを行います。話は経営に留まらず多岐にわたります。経営者は30代から50代の方が多く、親の相続についてご相談を受ける機会も増えてきました。
所得税の確定申告に目が行きますが、贈与税の申告も同じ3月15日までになっています。
今日は昨年行った贈与についてお話したいと思います。
(概要)
経営者の親がテナントビルの一室を区分所有している。
高齢のため管理組合への参加が困難になってきたので子に任せたい。
このご相談を頂いたときにどのような形式で不動産を移転させるかシミュレーションしてみました。比較的手続きが容易な次の4つで考えてみました。
それぞれどのようなメリット、デメリットがあるのでしょう。
①暦年贈与
(メリット)
・毎年110万円以内であれば課税されない。申告も不要。
(デメリット)
・非課税枠が110万円なので高額財産を移すには不向き。
・税率が高い。贈与が高額になれば税率は最高55%にもなる。
②相続時精算課税
(メリット)
・2,500万円まで課税されない。超えても税率が低く一律20%。
・実際に相続が発生したときに相続財産に足し戻して再計算するが、評価は相続時精算課税を適用したときのものになる。値上がりが見込める財産に適用するのが良い。
・家賃収入が親に入らなくなり財産の増加を防げるので相続対策になる。
(デメリット)
一度使うと①の暦年贈与に戻ることができない。登記、税務申告が必要で費用がかかる。
③譲渡
(メリット)
・不動産の完全移転、完結。相続発生時に何ら手続き不要。相続時の争続回避。
(デメリット)
・買手は購入資金が必要になる。
・売り手。税率が高い。売却額から取得費を差し引いた売却益に税率を乗じるが、先祖代々受け継ぐ土地などで取得費が分からない場合は売却額の5%となり、つまり売却額の95%が利益となり税額も高額になる。
④信託
(メリット)
・贈与税、不動産取得税がかからない。
(デメリット)
・名義は変わるものの家賃収入の帰属は親のままなので相続対策にはならない。
※信託は所有権を名義と権利に分けたと考えてください。名義は子に移って管理を任せられるようになったのだけれども、実質所有者は親のままで収入は従来通り親のもの。
それぞれの長所、短所はこんなところです。移転に当たっては、これを踏まえて当然税額も試算しました。
その結果②を選びました。取得費が不要であること、2,500万円まで非課税で税額も低く抑えられること、以後の家賃収入が子のものになり親の財産増加を抑制できること、移転する財産が土地で今後も地価上昇を見込めることが決め手でした。
一人一人状況は異なりますのでそれに合わせた検討が必要です。
みなさんも確定申告が一段落したら相続・贈与について考える時間を設けてはいかがでしょうか。
監査部2課 藤野慶一